カーエアコンの仕組みとトラブルについて
現代の車なら必ず搭載されているカーエアコン。しかし、この仕組みについて考えたことのある方は少ないかと思います。車のメンテナンスではエンジントラブルやタイヤ交換など様々な問題と直面しますが、エアコンも同様に故障する可能性があります。場合によっては、エアコンの修理に20万円近く掛かり、乗り換えの要因にもなります。この記事では基本的なエアコンの仕組みと共に、各部品の一般的なトラブルについて解説します。
テーマ1「なぜ冷たい風が出るの?」
この仕組みを理解する上で欠かせない図があります。まずはこちらをご覧ください。

この図を見ただけでは分かりにくいかもしれませんね。一緒にじっくり見ていきましょう。
これは一般的なカーエアコンを表した図で、色のついた線が1本の長い配管を表しています。この配管がコンプレッサー(図左下)から始まり、各部品をぐるりと経由して最後にもコンプレッサーに繋がっています。これら一連の流れを冷凍サイクルといい、カーエアコンの場合はこれらの部品が車のボンネット内に納まっています。
配管内の「冷媒ガス」によって冷たい空気は作られる
「フロンガス」と聞くと排出規制やオゾン層を思い浮かべる人も多いかと思います。まさにかつてはそういった性質のガスが使われ続けていました。過去には環境負荷の高いフロンガスが使用されていましたが、度重なる規制によって今では環境負荷の低い代替ガスも多く登場しています。
実際にはガスがエアコンから漏れ出て大気放出されて初めて環境汚染になるのですが、基本的にエアコン配管は密閉されていますので、動かすだけで環境に影響はありません。
少し話が脱線しましたが、このガスは別名「エアコンガス」や「冷媒」とも呼ばれます。この冷媒をエアコン内で液体に圧縮し、それを気化させることによって気化熱(蒸発熱)を発生させ、冷たい空気の元を作っています。
気化熱とは、液体が気体になるときに周囲の熱を吸収する現象です。最も身近な例は汗です。汗が乾くときにひんやりするのも気化熱によるものです。お察しの通り、この気化熱(冷たい状態)を作り続けるのがエアコンという装置です。
もう少し似たものを考えると、スプレー缶がそれに近いです。スプレー缶の中には製品成分だけでなく、圧縮されて液体になったガスが高圧の状態で入っています。ノズルを押すと、缶の中の液体ガスが気化し、周囲の熱を奪い気化熱が発生します。この仕組みをエアコンの中ではグルグルと繰り返しているのです。

1. エキスパンションバルブ(噴霧器)
それでは、このスプレーノズルの役割は先ほどの図のどの場所にあたるでしょうか。答えは、エアコンの図の右上にあるエキスパンションバルブ(通称エキパン)です。
この部品は、圧縮された液状の冷媒を霧状に噴霧させる役割を持ち、内部の弁で噴霧量をコントロールしています。図における人差し指とノズルがエキスパンションバルブに相当します。部品の見た目としては、高圧配管と低圧配管を接続するためのポケットが2つついているのが特徴です。冷媒ガスは細い方から出ていって、太い方から帰ってきます。

2. エバポレーター(蒸発器)
エバポレーターは、エキスパンションバルブで噴霧された霧状の冷媒が気化する(蒸発する)場所です。
この部品は室内ユニットに該当するため、カーナビやエアコンコントローラーの奥深くに配置されています。そのため、この部品を交換するには電装部品の多くを取り外す必要があり、工賃が高額になることで知られています。
見た目はラジエーターのように無数の回路とフィンが付いた形状で、これは冷媒が気化しやすいよう表面積を増やす設計です。ここにブロアファンで送られた空気がフィンに触れ、気化熱によって熱が奪われて冷たい空気になります。そしてエアダクトを通って室内に届けられます。

3. コンプレッサー(圧縮機)
コンプレッサーはエアコンの心臓部のような部品です。エアコンの勉強では初めに紹介されることが多い部品ですが、この記事ではスプレー缶の例えを先に紹介しました。
役割は、エバポレーター内で気化した冷媒ガスを高圧状態に圧縮することです。気体の体積を圧縮する装置です。勘違いされやすいですが、この時点では高温ですがまだ気体です。エバポレーターから来た低圧のガス(太い配管)を圧縮し、高圧のガス(細い配管)として送り出します。
動力はエンジンベルトから取るため、エンジンの側面あたりでアルミ配管を探すと見つけやすいです(ハイブリッド車や電気自動車は異なります)。
また、コンプレッサーオイルの存在も重要です。このオイルは冷媒ガスと一緒にエアコンサイクル内を回りながら、コンプレッサーの摺動部を潤滑しています。

4. コンデンサー(凝縮器)
コンプレッサーで高温高圧になった冷媒ガスは、次にコンデンサーで冷やされて液化します。
冷媒は圧力が高い状態でも、温度が高ければ気体のままです。しかし、圧が高い状態のまま温度を下げることで、液化させることができます(低温高圧の液体)。ただし、ここでいう「低温」とはコンプレッサー出口(高温)と比較した表現であり、実際の温度は60℃程度と高温であることを覚えておきましょう。
部品の見た目はエバポレーター同様にフィンがたくさんあり、通常はラジエーターの全面に配置されています。

5. レシーバータンク / レシーバードライヤー
コンデンサーで液化した冷媒が次にたどり着くのがレシーバータンクです。ここは液冷媒のサブタンクのような役割ですが、実際には気体の冷媒も入ってきます。コンデンサーで冷媒のすべてを液化できるわけではないため、このタンクに貯蔵されながら冷やされ、液化が進みます。
もう一つのレシーバードライヤーとは乾燥材のことで、エアコンサイクル内に侵入した水分を捕まえる(除湿する)役割があります。エアコン内の水分は故障の主な原因となるため、非常に合理的な仕組みです。

6. サービスポート(低圧/高圧)
これまでの部品とは少し異なりますが、エアコン配管にはサービスポートという接続口があります。ここから冷媒ガスを充填したり、抜き取ったり、配管内の圧力を測定したりします。
サービスポートは主にコンプレッサー手前の低圧側(L)と、コンデンサー後の高圧側(H)に一つずつ付いていることが多いです。通常はL(低圧)かH(高圧)と書かれたキャップで閉められています。

おさらい
ここまで、カーエアコンの仕組みをご説明しました。理解を深めるためにオススメなのが「今すぐご自身の車のボンネットを開けて、各部品がどれか実際に見てみること」です。カーエアコンの部品はエバポレーター以外、多くが見える位置にありますので、配管がどのよう繋がっているかを目で追ってみるのも面白いと思います。


テーマ2「どんな風に壊れるの?」
ここまで部品の名前と役割を紹介してきましたが、それらがどのような不具合や故障を起こすのでしょうか。事故による破損といったケースは除き、一般的なトラブルを見ていきましょう。
1. エキスパンションバルブの詰まり
エキスパンションバルブは数ミリ程度の弁の開閉で噴霧量を調整しています。ここにエアコンオイルのスラッジ(汚れ)やコンプレッサーから発生した鉄粉、水分などが溜まると詰まることがあります。取り外して洗浄しようにも、室内ユニット奥深くにあるため、非常に手間のかかる作業が待っています。

2. エバポレーターの漏れ/異臭
エバポレーターは気化熱によって冷やされ、外から大量の空気が送り込まれます。手前にエアコンフィルターがありますが、100%のフィルタリングは現実的に不可能です。
何年もかけて蓄積したホコリや菌が、空気中の水分(結露)によって濡らされます(夏場に車の下に水たまりができるのはこの結露水です)。エアコンを切ると、ユニット内は暖かく、じめじめとしたカビが繁殖しやすい環境となります。これが異臭の原因です。
また、この水滴がエバポレーター(アルミ製)を腐食させ、わずかな穴が開けばそこから冷媒ガスが漏れることもあります。

3. コンプレッサーの摩耗(焼き付き)
コンプレッサーはエアコンの中で最も忙しく、内部は絶え間なく動き続けています。摩擦を減らすためにコンプレッサーオイルが使われていますが、いずれは摩耗して圧力不足(圧縮不良)を起こします。
特に摺動部の潤滑が悪いと焼き付きが起こり、鉄粉が発生します。厄介なことに、この鉄粉をエアコン配管全体に送り届けてから壊れます。
この鉄粉が非常に厄介で、配管やコンデンサー、エバポレーターの細い管まで全てに回ってしまいます。酷い焼き付きを起こした場合、コンプレッサーを新品に交換しても、配管内に残った鉄粉が原因ですぐに再故障することがあります。各配管や部品をすべて取り外して徹底的に洗浄する必要がありますが、これは非常に困難な作業です。

4. コンデンサーの目詰まり(冷却効率の低下)
コンデンサーのフィン(外側)にゴミやホコリが詰まると、冷媒の冷却が十分に行えません。そうなるとレシーバータンクから適切な量の液体冷媒をエキスパンションバルブに送ることができず、冷却能力の低下を招きます。
洗車の際に高圧洗浄機などで(フィンを倒さないよう注意しながら)洗うのも有効です。ただし、同じような症状でもクーリングファンの故障という可能性もあります。

5. レシーバータンク/ドライヤーの目詰まり
この部品は不純物や水分を取り除くためのろ過機能(フィルター)が主な役割です。このフィルターが目詰まりを起こせば冷媒ガスの流れが悪くなります。また、ドライヤー(フィルター)が劣化して破けることもあります。

6. エアコンオイルの劣化(冷却効率の低下)
オイルが酸化、水分を含むことにより、配管内部に堆積することがあります。エアコンの配管内部に、劣化したコンプレッサーオイルがヘドロのように堆積することをオイルファウリング現象といいます。
- 症状: エアコンガス・オイルと配管の接触面積を減らし、熱交換の効率が落ちます。1年で約7〜9%パフォーマンスが低下し、結果としておよそ30%以上効率が低下するともいわれています。
- 原因: オイルが劣化して粘度が高くなる(硬くなる)ことで発生します。劣化したコンプレッサーオイルが配管内壁の微細な凹凸に付着し、その層が徐々に厚くなることで、パフォーマンス低下につながります。
さいごに
ここまで大まかなエアコンの仕組みをご紹介しましたがいかがだったでしょうか。エアコンの回路を考えるときは、冷媒ガスが各部品でどのような状態(気体か液体か、高温か低温か、高圧か低圧か)であるかをイメージしてみると、理解が深まります。
当社はカーエアコン整備分野での国内No.1カンパニーですので、各部品の補修方法や修理方法でお困りの際はお気軽にお問合せください。
